ケーブルによるパルス伝送では、ケーブルの長さが長くなると、波形の立ち上がり と立ち下がりが遅くなり、振幅も小さくなりますから、長さの増加と共にノイズ マージンが下がり、いずれは信号の識別が出来なくなります。
立ち上がりの遅い波形でランダムな信号を伝送すると、過去の履歴により波形のタ イミングがずれて、一種のジッタを生じますから、振幅と時間の2面から伝送波形 の劣化を評価することが必要で、この目的で良く使われるのが、「アイ・ダイアグ ラム」(eye diagram) です。
アイ・ダイアグラムというのは起こり得るすべての波形を重ね合わせたもので、眼 を連想させる図形になりますが、すべての軌跡が時間軸と振幅の弁別可能な領域に 入っていれば良いという信号の弁別可能条件を「ある領域に信号の軌跡が入らなけ ればよい」という幾何学的条件に転化できますから、直観的判断ができるのが利点 です。
以下、3080 と 3173 の2機種のディジタル・オーディオ・ケーブルについて、典 型的なアイ・ダイアグラムの実測例を用意しました。それぞれ、どの程度の長さで 使えるかの判断ができると思います。ケーブルの入力端には、AES3 で規定された 最低の電圧である 3 Vpp @110 Ohm の同じ規格で規定された符号化方式の 48 kHZ のランダム波形を加え、ケーブルの出力端は 110 Ohm の抵抗で終端しました。信 号レベルをあげれば、伝送特性も改善されますから、これが最悪条件になります。
AES3-1985 のレシーバは、振幅 200 mV、クロックの 1/2 幅まで弁別できることに なっていますから、この大きさの4角の中に信号が入らなければ、正しく受信でき ることになります。オシロスコープの電圧格子は 200 mV、時間軸格子は 100nS で すから、眼の中心に 163nS x 200 mV の4角な図形を書いて、その中を信号が通ら なければ使用可能と判断します。
3080 は AES3-1985 にもとずいて設計された、標準的なディジタル・オーディオ・ ケーブルです。AES3 では最大 100 m までのケーブルを想定していますが、3080 では 300 m 程度が限界になります。
3080 を 100 m で使った場合
3080 を 200 m で使った場合
3080 を 300 m で使った場合
3173 を 200 m で使った場合
3173 を 300 m で使った場合
3173 を 500 m で使った場合